【本】ホワイトラビット/伊坂幸太郎 

  • 2018.02.15 Thursday
  • 05:27

【本】ホワイトラビット/伊坂幸太郎 を読む。

「ミステリが読みたい! 2018年版 8位」「このミス2017 2位」「池上冬樹2017年度ミステリ−ベスト9位」ついでに東野幸治が好きな本にあげていた。

 

時代小説で時折作者が顔を出す語り口があるが、ここまで作者が登場する話は初めて読んだ。伊坂幸太郎らしい軽快さですね。

 

『初めて登場したこの名前に、戸惑う者もいるだろう。次々と人が増えることは物語に混乱を招くが、心配無用、まったくの新しい存在ではない。』

 

『それにしても、ここでまた、『レ・ミゼラブル』が登場するとは。今村と黒澤がこの小説を読んでいたのはまだ、百歩譲って良しとしても、さらにもう一人言及するのは、さすがに偶然にもほどがある、都合が良すぎる、と呆れる方もいるたろう。・・・ここでこの小説に言及することは、白兎事件を語る物語において、さほど大きな要素ではなく、都合が良すぎるも何も、大して都合は良くならない。あくまでも話を膨らませる一種の、ドライイースト、ベイキングパウダーのようなものに過ぎず・・・』

 

終わり方も

『その名前に聞き覚えがあり、○○は顔を上げ、店員を見た。せっかく物語が終わるところなのだから、「○○」くらいの声をかけてもいいように感じるが、もちろん彼はそんなことをせず、実際のところ、そうならなくても幕はおりる』

 

笑ってしまう。

今年のベストテン<本>

  • 2017.12.25 Monday
  • 05:37

今年のベストテンを考えてみる。まず本。


読んだ数22冊。昨年は40冊なのでずいぶん減った。


毎週図書館の新刊チェックをして読みたい本をリストアップしているが、今見たら今年だけで353冊になっている。6%しか読めてない計算だ。図書館の予約が多くなる本は負けじと予約してしまうのとエッセイは生ものなのでそちらを優先してしまうと普通の小説などが思ったように読めないままに毎年が過ぎていく。

 

読んだ本はずいぶん面白かった。至福の時でした。

 

ゝ鎧涼陳校Δ :第1部 顕れるイデア編第2部 遷ろうメタファー編/村上春樹
¬蜂と遠雷/恩田 陸
みかづき/森 絵都
のΣΑ臣唹羝予
イ澆澆困は黄昏に飛びたつ/川上 未映子 
ε瓦旅/池井戸潤
Д灰鵐咼某祐屐紳偲 沙耶香
┨眩匏鬚稜愧罅紳膕次 ̄兌
火花/又吉直樹 
慈雨/柚月裕子

 

村上春樹は別格として、その舞台裏をインタビューした「みみずくは黄昏に飛びたつ/川上 未映子」が面白かった。書いた本人はあらかた忘れていて、読者のほうが鮮明に覚えている。「それも忘れたんですか」と責められていたのがおかしい。

 

半分は女性作家。日常のディテイルを書き込む女性作家のものが好きだが、「蜜蜂と遠雷/恩田 陸」はピアノの音を文字にする文章力に驚嘆し、「みかづき/森 絵都」は戦後を生き抜いた骨太の家族史というスケール感が素晴らしかった。「日常のディテイルを書き込む」とも言えなくなってきた。

 

 

このミスのベストテン

  • 2017.12.16 Saturday
  • 05:04

ミステリベストテンの本命、このミスのベストテンが出てました。

 

1位 屍人荘の殺人/今村昌弘

2位 ホワイトラビット/伊坂幸太郎

3位 機龍警察 狼眼殺手/月村了衛

4位 ミステリークロック/貴志祐介

5位 いくさの底/古処誠二

6位 狩人の悪夢/有栖川有栖

7位 遠縁の女/青山文平

8位 かがみの孤城/辻村深月

9位 盤上の向日葵/柚月裕子

10位 開化鐵道探偵/山本巧次

 

1位 フロスト始末(上下)R・D・ウィングフィールド

2位 13・67/陳 浩基

3位 東の果て、夜へ/ビル・ビバリー

4位 湖畔荘(上下)ケイト・モートン

5位 黒い睡蓮/ミシェル・ビュッシ

6位 ジャック・グラス伝宇宙的殺人者/アダム ロバーツ

7位 渇きと偽り/ジェイン・ハーパー

8位 その犬歩むところ/ボストン・テラン

9位 ゴーストマン消滅遊戯/ロジャー・ホッブズ 

10位 シンパサイザー/ヴィエト・タン・ウェン

 

「屍人荘の殺人/今村昌弘」の1位がインパクト強い。「週刊文春ミステリーベスト10」「本格ミステリ・ベスト10」でも1位と三冠達成した作品がデビュー作とは劇的な新人登場だ。こうした存在がミステリ界を活性化する。文春の時に書いたように、32歳まで作家をやって駄目だったら諦めるという32歳の受賞ですからもう少しで逸材が世にでないところだった。

 

「フロスト始末(上下)R・D・ウィングフィールド」の1位も順当なところ。他のベストテンと比べて半分は重なり半分はここだけというのも順当なとこでしょうか。

 

毎年1位は読むが2位以降に手が出ない。今年は少し先まで読みたいものだ。

 

「週刊文春」の推理小説年間十傑

  • 2017.12.10 Sunday
  • 17:40

「週刊文春」の推理小説年間十傑が発表されていた。

 

1 屍人荘の殺人/今村昌弘

2 盤上の向日葵/柚月裕子

3 ホワイトラビット/伊坂幸太郎

4 狩人の悪夢/有栖川有栖

4 機龍警察 狼眼殺手/月村了衛

6 教場0/長岡弘樹

7 AX/伊坂幸太郎

8 いまさら翼といわれても/米澤穂信

9 この世の春上下/宮部みゆき

10 かがみの孤城/辻村深月

10 ミステリークロック/貴志祐介

 

1位「屍人荘の殺人/今村昌弘」は知らなかった。「鮎川哲也賞」をとってる。

記事によると29歳でレントゲン技師をやめて32歳までの期月付で作家活動をして、今年が32歳だったとか

ヴァン・ダインや都筑道夫を一から説明しなくてはいけないことに嫌気がさしていた主人公というのが良さそう。創元推理文庫のトップはヴァン・ダインなのでワタシたち世代はヴァン・ダインから読んでいた。

 

他の本はだいたいは知っいるが、読んでるものは一つもない。

「盤上の向日葵/柚月裕子」は将棋の世界を題材にしているので読みたかったし、「教場0/長岡弘樹」はワタシの好きな倒叙もので『「刑事コロンボ」「古畑任三郎」に連なる倒叙ミステリーのニューヒーロー!』とか言われるとウズウズしてしまう。

 

伊坂幸太郎の「ホワイトラビット」「AX」は昨日の「ミステリが読みたい」と同様2冊がランクインしている。

「この世の春上下/宮部みゆき」は今図書館に予約している。

 

「かがみの孤城/辻村深月」は「ダ・ヴィンチ」のベスト・オブ・イヤーでは1位になっていた。

 

1 13・67/陳 浩基

2 フロスト始末(上下)R・D・ウィングフィールド

3 湖畔荘(上下)ケイト・モートン

4 東の果て、夜へ/ビル・ビバリー

5 その犬の歩むところ/ボストン・テラン

6 晩夏の墜落/ノア・ホーリー

7 湖の男/アーナルデュル・インドリダソン

8 コードネーム・ヴェリティ/エリザベス・ウェイン

9 紙片は告発する/D・M・ディヴァイン

10 シンパサイザー/ヴィエト・タン・ウェン

 

海外は6冊が「ミステリが読みたい」と重なっている。中で「13・67/陳 浩基」はここだけ。話題作だ。期間の関係で「ミステリが読みたい」には出てこなかったのかな?

「ミステリが読みたい!」2018年版のランキング発表

  • 2017.12.09 Saturday
  • 06:42

ハヤカワがやっている「ミステリが読みたい!」2018年版のランキングが発表になってた。 

『書評家、作家、翻訳家、書店員といったミステリのプロフェッショナルに、海外作品・国内作品のベスト10を選出してもらう』となっている。

【海外篇】
第1位『フロスト始末』(上下)R・D・ウィングフィールド 芹澤恵/訳
第2位『湖畔荘』(上下)ケイト・モートン 青木純子/訳
第3位『東の果て、夜へ』ビル・ビバリー 熊谷千寿/訳
第4位『コードネーム・ヴェリティ』エリザベス・ウェイン 吉澤康子/訳
第5位『その犬の歩むところ』ボストン・テラン 田口俊樹/訳
第6位『湖の男』アーナルデュル・インドリダソン  柳沢由実子/訳
第7位『シンパサイザー』ヴィエト・タン・ウェン 上岡伸雄/訳
第8位『青鉛筆の女』ゴードン・マカルパイン 古賀弥生/訳 
第9位『悪魔の星』(上下)ジョー・ネスボ 戸田裕之/訳
第10位『その雪と血を』ジョー・ネスボ 鈴木恵/訳
第10位『約束』ロバート・クレイス 高橋恭美子/訳
 

【国内篇】

第1位『機龍警察 狼眼殺手』月村了衛
第2位『いくさの底』古処誠二
第3位『紅城奇譚』鳥飼否宇
第4位『狩人の悪夢』有栖川有栖
第5位『開化鐡道探偵』山本巧次
第6位『AX』伊坂幸太郎
第6位『義経号、北溟を疾る』辻真先
第8位『月と太陽の盤』宮内悠介
第8位『ホワイトラビット』伊坂幸太郎
第10位『悪魔を憐れむ』西澤保彦

 

さすがハヤカワ、海外篇が先に来る。

「フロスト始末」シリーズ強いですね。6冊出ていいてこれが最終回なんだそうだ。それで1位なのかもしれない。まだ一冊も読んでいないので頭から読んで行きいたものだ。

 

国内では月村了衛が人気がある。機龍警察シリーズが有名ですが、「ミステリが読みたい!」での1位は初めて。こちらも6冊目になる。これまた一冊も読んでいない。頭から読んでいきたいものだ。

 

伊坂幸太郎がやはり人気があって2冊も入ってる。

辻真先って懐かしい名前があって、調べたら1932年生まれなので86歳になる。今だに作品を出し、ベストテンに顔を出すとはスゴイものだ。

 

毎度のことながら読んでる本は一冊もない。図書館の在庫の有無を調べたら『悪魔の星』(上下)ジョー・ネスボ 以外は全部あった。1位のものくらい読みたいものだ。

【本】福家警部補の挨拶/大倉 崇裕 をタブレットで読む。

  • 2017.11.28 Tuesday
  • 04:37

【本】福家警部補の挨拶/大倉 崇裕 読了。

大好きな福家警部補シリーズの1作目。これだけ読んでなかったのは、ドラマでやっていたものばかりだから。アマゾンのPrime Readingという書籍無料読み放題が始まっていて、その中にあったので読んだ。電子書籍として初めて読んだ本ということになる。横にすると縦の文字数が少なく新鮮な配置になったり、下に読了までの時間数が出る。読むスピードを計算してくれてるのも面白い。

内容は、ドラマは忠実に描いていたんだなと思う。忘れているところも多いので、半分は新鮮に読んだ。

【本】劇場/又吉直樹を読む。

  • 2017.11.27 Monday
  • 05:34
評価:
¥ 1,404
(2017-05-11)

【本】劇場/又吉直樹を読む。

「神田川」の世界蘇るって感じでしょうか。赤いマフラーをして銭湯に行っても何ら不思議のない世界。四畳半フォークの時代、歌のヒットに連れて、貧乏で、若いがゆえの不安定さで、自分を傷つけ、恋人をも傷つけるという映画がたくさんできた。最後真っ赤な口紅をつけて狂ってしまうのは何の映画だったか。「劇場」もそれに近い展開となる。

ここでの彼女は天使のような理想的な女性。そんな女性はいないだろと思うが、その存在が主人公のダメぶりを引き立てるという構造になっている。

『少しでも別のことで心に不安があると無性に神経が昂ることがあった。その感覚が腹の底に沈殿すると、自然と表情がこわばり、身体に力が入る。そうなるたびに小さなことに拘泥する自分自身のことを、せこくて醜い生きもののように感じてしまう。それでも気持ちは収まらず、執拗に沙希を責めたくなるのだった。』

『優しい人の顔を見ながらでは血だらけで走ることはできない。』

 

青春の苦悩というと聞こえはいいが、コンプレックス、嫉妬、自己愛、自己憐憫、自意識過剰と徹底的にダメぶりを羅列していく。読みながら、共感したり、こんなにひどくないと優越感を持ったりするが、主人公にそれから脱却していこうというベクトルが見えないので、自己嫌悪が自己愛の裏返しでしかないと分かってうんざりしてくる。さらにこの心根がイノセントな女性を傷つけていくというはどう説明されても単なる唾棄すべき男じゃないかと思う。

 

自分がいかにダメな男であるかを綿々と書くというのが又吉直樹の作風になるんだろうなと思う。

こういう件は又吉直樹の地の気持ちが正直に出てるんじゃないかと思い、感心するような笑ってしまうような。

『嫉妬という感情は何のために人間に備わっているのだろう。なにかしらの自己防衛として機能することがあるのだろうか。嫉妬によって焦燥に駆られた人間の活発な行動を促すためだろうか、それなら人生のほとんどのことは思い通りにならないのだから、その環状が嫉妬ではなく諦観のようなものであったなら人生はもっと有意義なものになるのではないか。自分の持っていないものを欲しがったり、自分よりも能力の高い人間を妬む精神の対処に追われて、似たような境遇の者で集まり、嫉妬する対象をこき下ろし世間の評価がまるでそうであるように錯覚させようと試みたり、自分に嘘をついて感覚を麻痺させたところで、本人の成長というものは期待できない。他人の失敗や不幸を願う、その癖、そいつが本当に駄目になりそうだったら同類として迎え入れる。その時は自分が優しい人間なんだと信じこもうとしたりする。この汚い感情はなんのためにあるのだ。人生に期待するのはいい加減やめたらどうだ。自分の行いによってのみ前向きな変化の可能性があるという健やかさで生きていけないものか。この嫉妬という機能を外してもらえないだろうか。と考えて、すぐに無理だと思う。』

 

文学者の名前をつけた選手がゲームでサッカーをするとか、芝居仲間に延々と悪口を書いていく といった塊が少し過剰すぎて趣向に見えてしまうところがある。

 

ただ、演劇の考え方とか、描写とか、比喩は的確で豊かな語彙で語られる。

『前向きに生きていけるんやったら、演劇なんてやらんよ。勉強しなさい。綺麗な服着なさい。髪型ちゃんとしなさい。美しい言葉を使いなさい。それに疑問も持たんと全部言う通りにしてきた人間がどう間違えたら大学もいかんと働きもせんと東京出てきて劇団なんてはじめんの?表現に携わる者は一人残らず自己顕示欲と自意識の塊やねん。』

『物語の力というのは、現実に対抗し得る力であり、そのまま世界を想像する力でもある。』

 

最後、シナリオを読むフリをして本音を語り合うところは、「火花」の逆さ言葉漫才にも似たアイデアで、泣き節綿々、不愉快な読み心地だったのが、うまくまとめられる。こういうの日本映画は好きだからまたドラマ化映画化されるんだろうな。

 

「自主規制しなくても、ま、平気らしい」ということ

  • 2017.11.03 Friday
  • 15:21

「わたしの容れもの/角田光代」を読んだ。

タイトルはシンプルに自分の身体のこと−とりわけ加齢により変化する−をテーマに書いている。

中で「補強される中身」がおかしかった。

 

加齢イコール人間が出来てくる と小さいときから思っていたが、最近違うような気がするという話。

『人は年をとっても、よりよい人間になったりはしない。』

『急いでいた人はますます急ぎ、怒りっぽかった人はますます怒りやすくなり、たいてい、不寛容になる。寛容に見えるときもあるが、それは認めているのではなくて、どうでもいい、つまり興味がないのである。どちらかというと、美点より、欠点のほうが、増長されていくような気がする。』

『ちいさな欠点は私たちのなかに小分けで詰まっている。でも、それらが飛び出してこないように私たちはいつも注意を払っている。』

『生きていくということは、たしかにいろいろ経験はすることではあるけれど、経験し、賢くなっていくといよりは、経験し、「自主規制しなくても、ま、平気らしい」と知っていくことなのかもしれない。』

 

納得です。年とると生きることに慣れて、少し図々しくなり「自主規制しなくても、ま、平気らしい」と思うようになる。出てくるのが他所様に見せてはならじと思っていた欠点なんだから周囲はいい迷惑だ。当人は年とったので、もっと自分らしく生きよう、残り少ない人生自分に忠実に生きようと思ってのことだったりする。

 

『寛容に見えるときもあるが、それは認めているのではなくて、どうでもいい、つまり興味がないのである。』というのも鋭い。年とると興味の範囲が狭まってくるので、興味の範囲外が増えているだけだ。

 

昔心理学の話で、人間は本能を社会生活で獲得したもの−自我だったかな−でくるむようになるが、年取るその社会生活で獲得したものが剥げて本能がむき出しになってくるそうだ。その方が理解しやすい。

【本】鉄の骨/池井戸潤 が面白い。

  • 2017.10.13 Friday
  • 05:12

【本】鉄の骨/池井戸潤 を読む。

銀行ものでなくても池井戸さんの本は面白い。テーマはゼネコンの「談合」。中堅ゼネコンの内部の対立、談合を通じて、ゼネコン間の対立、談合の調整役のフィクサー、議員。談合摘発に動く検察と複雑に関わりあう組織、個人をリアルに描写し尽していてワクワクしながら読む。企業小説って面白いなと改めて思う。

 

池井戸さんの小説は勧善懲悪が基本で、ベタな通俗性がベースとしてあるのだが、それが薄っぺらに感じさせないところがうまい。取材が丁寧でリアリティがあるからだろうと思う。今回で言うとフィクサーを悪役にすればカンタンなんだが、談合には反対という考えを持っているとしたことで話に深みを持っているましている。

 

サブストーリーとして恋人との関係があるが、同じ職場のエリートにあこがれて主人公とどちらをとるかという話が描かれるが、これは平太に戻るというストーリーが透けて見える。

 

談合は進む中、折り合いがつかず、決めきれないまま入札に臨む。検察庁は深夜までの捜査を繰り返し、最後に尻尾をつかみ摘発に動く。落札はどうなるのか、検察の追求はと抜群のストーリーテリングだ。

 

ただこのオチはどうなんでしょう。ちょっと強引な気がしましたが。

【本】蜜蜂と遠雷/恩田 陸 が素晴らしい

  • 2017.09.29 Friday
  • 05:01

【本】蜜蜂と遠雷/恩田 陸 が面白かった。

直木賞と本屋大賞のダブル受賞となった本作品。ピアノ国際音楽コンクールの話だ。500ページ以上ある長尺でその2/3はピアノ演奏シーン。「羊と鋼の森」の時に『音楽を文章で表すのはとても難しいと村上春樹が言っていたが、これはそれに挑戦し、とてもうまくいってる話だ。なんと繊細で奥の深い世界でしょう。ワタシのようなシロウトから見るともう超能力者の世界ですね。少し大げさな表現なんだが、感性の豊かさがなせる技で、名文が次から次に出てくる。』

と書いたのだが、同じことがこの作品にも言える。ここまで音を文字にできるのかと感心する。もうこれ以上のものはないだろうと思うほどの出来だ。

 

主な登場人物、風間塵、マサル・カルロス・レヴィ・アナトール、栄伝亜夜、それに高島明石の弾くピアノの音をいろんなものに例えて表現し尽くす。一次、二次、本選と何度もコンクールはあるのでピアノシーンは多いのだが、その都度、その演奏を絶賛する。宇宙空間に行ったり、亡くなった母親が登場したり、長い物語を音で表現したり、自然を感じさせたり、旅行だったり。どれも褒め称える文章になるのでワンパターンになりそうだが飽きさせない。彼らの演奏もスゴイのだろうがこの文章もスゴイ。

 

 

音楽ものは映像だと実際に音を出せるので表現としては有利なようだが、これだけの音に対する感性を見る人の多くは持ち得ないので、不利なように見える音の活字表現が実は有利なんだと思う。

 

物語は少しマンガ風である。風間塵は16歳で親の養蜂業を手伝って旅行している。ピアノがない。しかし、テクニック、音感が天才的だ。オーケストラの音を聞いて、楽器の位置を返せる。その下の床は合板で補強しているから音が違うなどと言う。コンクール中に演奏そっちのけで泊まっている生花の名人を師匠と呼んで興味を持つ。少年マンガの主人公にありがちな設定だ。

 

演奏の絶賛ぶりもかなり大げさだ。最後の音楽シーンはこんな感じ。

『観客は圧倒され、演奏に飲み込まれそうになっていた。世界はこんなにも音楽に満ちている』『金管が、木管が、弦楽器が、ピアノが、風間塵が、亜矢が、観客が、ホールが、芳ヶ江が、鳴っている。世界が、世界が、世界が、鳴っている。興奮に満ちた音楽という歓声で。』

そっかぁ世界が鳴るのか。

笑ってしまうほど大げさなのだが、安っぽく感じない。その文章力に舌を巻く。

 

 

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