【本】騎士団長殺し/村上春樹 に満足。

  • 2017.05.07 Sunday
  • 15:25

「騎士団長殺し第1部 顕れるイデア編:第2部 遷ろうメタファー編」を読む。1000ページ以上あって19日かけて読んだ。村上春樹の作り出す小説空間は魅力的で、ボリュームがあるので、読み終えると淋しさと達成感がある。読書というより体験に近い。

 

多くの小説家が、勝手に動き出す登場人物を追っていくという書き方をしているが、村上春樹はその典型で、しかも自分の心の中を垂直に降りていく。小説世界をライト一つで進んでいるので、ワタシたちはぞろぞろとその後ろをついていくイメージでしょうか。

 

普通のドラマとして見ると地下3メートルのところで鈴が見つかるなんて、ましてイデアとしての小人が現れるなんてさほど面白いストーリーではないのだが、村上春樹の作品では自身も意識しないまま深い意味が内包しているので、それを分析的にではなく彼の物語空間に漂っていれば愉しめる。

 

彼の作品は比喩が多い。

「部屋に沈黙が降りた。何も書かれていない真っ白な広告看板を思わせる沈黙だった。」

現実では、会話中の沈黙に広告看板みたいだと思う人はまずいない。中には不自然なまでに長い比喩があって、普通に歩けばいいものを歌舞伎でたたらを踏んで歩いてるようなところがある。この不自然さ、デフォルメが村上春樹の小説の楽しさだ。また登場人物の多くは対象物から深み意味を見い出し、ユーモアの感覚があり、クラシックなど知的な素養がある。それはすべての小説に共通していて楽しい(時には嫌われてる)ので、村上ワールドにいるだけで豊かな時間を過ごせることになる。
 

もう一つ、行動をそのまま書いた文章が好きだ。

『免色が帰ったあと、その午後ずっと私は台所に立って料理をしていた。私は週に一度、まとめて料理の下ごしらえをする。作ったものを冷蔵したり冷凍したりして、あとの一週間はただそれを食べて暮らす。その日は料理の日だった。夕食にはソーセージとキャベツを茹でたものに、マカロニを入れて食べた。トマトとアボガドと玉葱のサラダも食べた。夜がやってくるといつものようにソファに横になり、音楽を聴きながら本を読んだ。それから本を読むのをやめて、免色のことを考えた』といった行動をたんたんと並べた文章。こういう文章がとても好きなんだがどうしてなんだろう。文体なんだろうか。

【本】慈雨/柚月 裕子 が面白い。

  • 2017.04.16 Sunday
  • 23:34

 

・「本の雑誌」2016年年間1位。定年退職した刑事が妻と四国巡礼の旅に出て、警察時代のことを振り返る話がメインだが、その時、警察では幼女殺害事件が起き、旅先でその事件解決に関係していく。また巡礼中に出会う人たちの身の上話、娘の結婚話などいろんなエピソードが交錯するスタイル。いずれも人生を感じさせる深い話で読み終えるとほのぼのしみじみとして後味がいい。

 

柚月裕子って初めて聞く人で、また読みたい作家が増えた。細かい心の襞を深掘りする女性作家が最近のマイブーム。

【本】みかづき/森 絵都 がとても面白い。

  • 2017.03.16 Thursday
  • 09:03

「みかづき/森 絵都」読了。

 

子どもたちを教えるのがうまい用務員が教育に興味がある気の強い女性から引っ張られ塾を開くことになる。当時の塾は存在自体が否定的だったようだ。そこからスタートして戦後の塾の変遷を背景にした家族ドラマだ。

 

塾の話などあまり興味はないのだが、森絵都といううまい語り手がいれば舞台はなんであってもいいのだということが分かる。たくさんの登場人物が生き生きと描かれ、波乱の塾の歴史と人間模様でドラマチックにリアルに話が進んでいく。

塾についてはかなり勉強して執筆しているようで、かなりの時間を省略しながら孫の代までのスケールの大きい話になっている。抜群のリーダビリティでした。

 

アマゾンで検索したらこうしたコピーがあった。

阿川佐和子氏「唸る。目を閉じる。そういえば、あの時代の日本人は、本当に一途だった」
北上次郎氏「圧倒された。この小説にはすべてがある」(「青春と読書」2016年9月号より)
中江有里氏「月の光に浮かび上がる理想と現実。真の教育を巡る人間模様に魅せられた」

驚嘆&絶賛の声、続々! 昭和~平成の塾業界を舞台に、三世代にわたって奮闘を続ける家族の感動巨編。

【本】僕らの落語: 本音を語る! 噺家×噺家の対談集/広瀬和生 が面白い。

  • 2017.02.25 Saturday
  • 23:11

落語界において落語の今を活字化してくれる広瀬和生さんの存在は大きいですね。

今回は「桂米團治×柳家花緑」「桃月庵白酒×春風亭一之輔」「春風亭百栄×三遊亭兼好」「柳亭こみち×三遊亭粋歌」の4つの対談。

印象に残ったところをメモしとくと・・・

 

・米朝が落語とは何かという問に「おじいちゃんが孫に聴かせるおとぎ話」と答えたそうだ。業の肯定とかイリュージョンというよりはわかりやすかもしれない。

 

・花緑が弟子の教育に頭を痛めていて、師匠の墓参りに行きたいと思っても、それを弟子たちに「行け」と命令すると恐怖政治になるのでしたくない。でも行くような気持ちにはなってもらいたい どうすればいいのかと悩んでるというのが少し首をかしげるとこがあるけど、神経質な感じが彼の個性なのかもしれない。

 

・白酒の「はい、これ言ったらウケま〜す、これ言ったらウケま〜す、」みたいな感じでしゃべるのと、そうじゃないしゃべり方というのは明らかに違う。で、あんまり一言一句まで正確に入れちゃうと、それに陥りやすい。」それでなるべく決めないで話すそうだ。

 兼好も「流れ作業みたいな感じで、「はいウケた、はいウケた・・・」みたいな感じてやってるときは、楽しくないですよね。「すげぇ予定調和で今しゃべってんな、っていうときはすぐ忘れるようにしてる。ウケたときのほうが逆に忘れるっていうか」

ウケたものは忘れるようにしているというのがスゴイ。

 

・兼好は最初落語自体にあまり興味がなかったようで、高座を聞いて、こんなにつまらないのにお金になるならラクだと入ったというのがおかしい。元手がいらない仕事。原材料費はいらないし、運搬も在庫も発生しないのでラクな仕事というのも一般の仕事をした人ならでは。

 

・こみちさんは二人の子持ちで、「「今日はこれくらいで、安パイで行こう」っていう風になっては絶対ダメなんだよね。これが恐ろしいです。お客さんは安パイの私を聞きにきているわけではないから。台詞とか間違えても闘っていてほしいと思うだろうし、だから闘うんですけど日々いっぱいいっぱいだし」って落語で闘ってるという表現をしているのはここだけでした。

【本】陸王/池井戸潤 がとても面白い。

  • 2017.02.16 Thursday
  • 23:14
評価:
¥ 1,836
(2016-07-08)

「陸王/池井戸潤」を読み終わる。
池井戸節全開で面白かった。「水戸黄門」のようなステレオタイプの勧善懲悪モノってあまり好きではないのだが、池井戸さんの作品だけは許してしまうどころか夢中になってしまうのはなぜなんだろう。
 
売上が先細りの足袋屋が長距離ランナーのランニングシューズの開発に乗り出す話だ。

こうした話はみんなの協力を得てトントン拍子に大成功でしたという話ではつまらないので必ず邪魔が入る。読者が一喜一憂するようにドラマをつくっていく。その加減が絶妙だ。池井戸さんはそのサジ加減とキャラの造形とリアリィが抜群だ。機械は壊れ、原材料調達はできなくなり、もうダメだろうというところから妙案が出てくる。うまいなぁ。
 
これはドラマ化したら大ヒットだと思ったら、TBS系で2017年10月期の日曜劇場枠でするそうだ。「半沢直樹」の時間帯だ。主人公は役所広司ということで、いかに力をいれているかが分かる。
 
池井戸さんの作品はドラマでだいぶ見たけど、ドラマ化してなくて未読のものも多い。意識して読んでいこうとさっそくリストアップする。

火花/又吉直樹

  • 2017.02.01 Wednesday
  • 23:23
評価:
¥ 1,296
(2015-03-11)

『野菜を売ってても漫才師やねん。』というフレーズが印象的。その前段はこう書いてる。
『漫才は面白いことを想像できる人のものではなく、偽りのない純正の人間の姿を晒すもんやねん。』
『つまりな、欲望に対してまっすぐに全力で生きなあかんねん。漫才師とはこうあるべきやと語る者は永遠に漫才師になられへん。長い時間をかけて漫才に近づいて行く作業をしているだけであって、本物の漫才師になられへん。憧れてるだけやな。本当の漫才師というのは、極端な話、野菜を売ってても漫才師やねん。』

お坊さんというのは掃除をしていも修行だし、ロックも音楽ではなくて生き方だと言う人もいる。しかし漫才もそうだとは思わなかった。

「欲望に対してまっすぐに全力で生きなあかんねん。」というのは談志が「落語とは業の肯定である」と言っていたのを連想する。業を肯定し、欲望に忠実なことが漫才道なんだろうか。
肯定も否定もできないかそう思って生きてる人もいるわけだ。笑い自体は破壊的でアナーキーなんだから過激な生き方となる可能性もある。

そこまでなくても本の中では生活のすべての場面で笑いにつながるセンスが求められ、ボケとツッコミとなっている。これは理解できる。メールを返すにしても普通に返してはいけない。

他にも求道的な笑いのあり方が色々出てくる。

『批評をやり始めたら漫才師としての能力は絶対に落ちる』
『自分とはこうあるべきやと思って、その規範に基いて生きてる奴って、結局は自分のモノマネやってもうてんねやろ?だから俺はキャラっていうのに抵抗があんねん』

『全ての芸人には自分の面白いと思うことがあるんですよ。でも、それを伝えなあかんから。そこの努力を怠ったら、自分の面白いと思うことがなかったことにされるから』
笑いに対する態度というのも真面目に取り組む人には結構シビアなものです。
他の芸人たちはこの本をどう読むのだろうか。自分たちのバイブルとなるのか、こんなもの自分でも書けるわいとなるのか。
 

芥川賞2冊

  • 2017.01.27 Friday
  • 23:15

 図書館に予約していた「火花/又吉直樹」の順番がようやく回ってくる。予約したのは2015/8/15なので1年半前。これまでで最長である。

同時に「コンビニ人間/村田 沙耶香」予約も番が来た。こちらは2016/8/31に予約したので半年ぶり。期せずして2年間の芥川賞の本を同時に手にした。偶然とは面白い。

松村雄策レビュー

  • 2017.01.19 Thursday
  • 05:34

・ロッキングオン2月号で、渋松対談を探すが今号はなし。松村雄策は脳梗塞で倒れたのであまりやらないのかな?パラパラと見ていたら、レビューのところでローリング・ストーンズのレビューを松村雄策が書いている。目次を見ると表記がない。見逃す人が多いのではないだろうか。

友達と飲みに行ってたりするとあるのでそう心配はしなくていいのかもしれない。もっとも、何か考えようとしてもまとまらないとか、飲むのも無理はできないとのこと。昔は一晩中飲んでいたが、もう無理はできない。と書いている。もうムチャはできない。

 

松村雄策は1951年生まれなので少し年上。しかしあまりかわらない。落ちていくスペックの中でそれなりにやっていくしかない。しかし、子どもまでつくったミック・ジャガーはどうなってるのだという話になっていく。自分の話からレビューにつなげるいつものスタイル。それなりに書ければまぁよかった。

今年のベストテン<本>

  • 2016.12.31 Saturday
  • 18:41

…が来る/辻村 深月
∋庵幸喜創作を語る/三谷幸喜 松野大介
ラオスにいったい何があるというんですか?/村上春樹
な神大家族/中島京子
ズの舟で海をわたる/角田光代
赤めだか/立川談春
母親ウエスタン/原田ひ香
福家警部補の報告/大倉崇裕
たてつく二人/三谷幸喜 清水ミチコ
ダブルジョーカー/柳 広司


読んだ本40冊(昨年は23冊)

職場がかわって、昼休み読書するようにしたら増えた。昨年に続きエッセイは賞味期限があるという判断から優先して読むようになってるせいもある。 ↓ぁ↓ァ↓Г禄性作家による日常のディテイルを細かく書いたもの。この種のものがマイブームだ。

渋松対談

  • 2016.12.27 Tuesday
  • 06:00

・「ロッキング・オン」の渋松対談は何十年と読んでいたコーナーだった(そういう人多い)がしばらく連載がなかった。松村雄策に何かあったのではと心配していたが、やはり脳梗塞で今は片麻痺が残ってるそうだ。話せないことはないけど、あまり話をすると息があがるそうだ。心配なのと、まだ続けられそうなので少しホッとしたというところ。
 

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