色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年/村上春樹 

  • 2013.07.01 Monday
  • 22:33
「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年/村上春樹」を読む。

上下本でないことと、大方は現実的な範囲で話が進むので村上春樹にしては読みやすい。羊男なんて出てこないのだ。もともと短編のネタということである程度全体が見えて書いているのではと思える。読みやすいかどうかはまぁどちらでもいいことだけど。

村上春樹が講演で言っていたという『生きるということは自分のストーリーを作ることで、小説家の役割は人々が持つ『物語』のモデルを提供すること。読者がそれを読んで共鳴し、呼応することで、魂のネットワークができていく。それが物語の力』という言葉を思い出す。

タイトルにある色彩を持たない個性。夜の船から落とされたような人間関係の崩壊。人間関係の深い意味。といったテーマは普遍的である。村上春樹自身が、つくるのように人間関係をいきなり切られたことがあるそうで、そうした体験にもとづいていることも共感しやすい原因かもれしない。

作中では次の言葉がこの小説のキモかもしれない。
『人の心と人の心は調和だけで結びついているのではない。それはむしろ傷と傷によって深く結びついているのだ。痛みと痛みによって、脆さと脆さによって繋がっているのだ。悲痛な叫びを含まない静けさはなく、血を地面に流さない赦しはなく、痛切な喪失を通り抜けない受容はない。』

村上春樹の造形する人物(駅が好きで駅づくりを仕事にしているとか)、またその描写の卓越した感じが心地よいですね。うまく言えないのだが、ふわっと生き生きと人物を描いていく。また、今回だと新宿駅の描写などは素晴らしいですね。文学的な表現力というのはこうしたことを言うのでしょう。

『今までしめていたネクタイは、テーブルの上に置いてみると、思っていた以上にくたびれて見えた。気がつかないまま続けていた不適切な習慣のようにも見える。』といった比喩や、『正しい言葉はなぜかいつも遅れてあとからやってくる。』といった格言めいた文もいうつものように味わいがある。

さて、次はいつ新作を読めるのでしょうか。

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